こんにちは、やつお(@yatsu_o)です。
NHKの『チョイス』という番組で、多発性骨髄腫について取り上げられていました。
がん細胞によって骨が壊され、激痛が走ったり、免疫力が落ちて肺炎にかかりやすくなったり、腎臓機能が低下したりする血液のがん『多発性骨髄腫』。
番組のVTRに登場した、多発性骨髄腫と13年前に診断された男性は、医師から余命3年といわれたそうです。
それぐらい難しい病気というのが当時の認識でした。
しかし、近年新しい薬がたくさん出てきて、生存率は飛躍的に向上しています。
男性は、「いまは充実した毎日を過ごしている」と口角が上がっていました。
ただ、多発性骨髄腫そのものは増加傾向にあるようです。
この記事を読むことで、以下のことがわかります。
- 多発性骨髄腫とは
- 多発性骨髄腫の症状
- 多発性骨髄腫の治療方法
- 多発性骨髄腫のセルフチェック方法
- 番組に登場した方々の闘病エピソード
多発性骨髄腫の治療方法や治療費は?新薬にも期待できそう。
多発性骨髄腫とは
白血球が『がん化』したものが多発性骨髄腫
『骨髄(骨の中にあるゼリー状のもの)』で造血幹細胞が産生されます。
その造血幹細胞が『白血球』『赤血球』『血小板』に変化して血液として流れていきます。
白血球の一種である形質細胞は抗体をつくり、細菌などから体を守る細胞です。
この形質細胞が、なんらかの原因で『がん化』するものがあります。
これを、骨髄腫細胞といいます。
骨髄腫細胞は、骨髄の中で異常に増殖します。
すると、白血球などの正常な血液細胞が作られなくなり、免疫力が低下します。
また、骨髄腫細胞は正常な抗体をつくれず、かわりに『Mたんぱく』と呼ばれる役に立たない抗体を大量につくりだします。
『Mたんぱく』が増えすぎると、腎臓などの臓器にたまり、機能が低下します。
さらに、骨髄腫細胞は、骨を壊す破骨細胞の働きを活性化し、骨を溶かしていきます。
こういったものが、多発性骨髄腫なんです。
多発性骨髄腫の症状
がん細胞が異常に増え、正常な血液細胞が減る
正常な血液細胞が減ると、このようなことがおきます。
- 『白血球』は免疫の役割をしているので、感染症・発熱などがおきる
- 『赤血球』は酸素を運ぶ役割をしているので、貧血・だるさ・頭痛・動機・息切れなどがおきる
- 『血小板』は血を止める役割をしているので、出血しやすくなったり、大きな青あざなどができたりする
『Mたんぱく』が増えて様々な臓器にたまる
Mたんぱくが増えることで、このようなことがおきます。
- 腎機能低下など
- 血液がドロドロになる(むくみ・頭痛)
骨がもろくなる・骨折する
骨がもろくなったり、骨折しやすくなったりします。
なお、このような症状なので、骨折や腎臓病などの治療も同時におこなっていく必要があります。
多発性骨髄腫の治療方法
患者と医師がよく相談して、治療法を決めます。
抗がん剤治療
抗がん剤には、以下のようなものがあります。
プロテアソーム阻害薬【細胞内のゴミを排除する酵素の働きを止め、がん細胞を自滅させる】
- ボルテゾミブ
- カルフィルゾミブ
- イキサゾミブ
免疫調整薬【からだの免疫の働きを調整することで、がん細胞の働きを抑える】
- サリドマイド
- レナリドミド
- ポマリドミド
抗体医薬【がん細胞を狙い撃ちできる薬】
- エロツズマブ
- ダラツムマブ
現在は『プロテアソーム阻害薬』『免疫調整薬』『抗体医薬』の3種類の薬を組み合わせて治療がおこなわれているそうです。
なぜ組み合わせて治療をおこなうかというと、ずっと同じ薬を使っていると効かなくなるため、がん細胞の変化に合わせて薬の組み合わせを選択しているわけです。
なお、サリドマイドは、薬害を起こした薬品ですが、2008年に多発性骨髄腫の治療薬として再承認され、厳重な安全管理のもとに使用されています。
抗がん剤治療にかかる費用
3割負担の場合、月に15~30万円です。
高額療養費制度も適用すれば、さらに負担額を減らすこともできます。
自家末梢血幹細胞移植
がん細胞を含む血液を正常な血液とまるごと入れ替える移植
造血幹細胞を特殊な薬を使用して骨髄から血管の血液中に出し、その血液から造血幹細胞だけを特殊な装置で取り出します。
とりだした造血幹細胞は、専用の容器に入れ、いったん冷凍保存します。
移植をするときには、大量の抗がん剤によって、まず骨髄の中のがん細胞をゼロにします。
移植といっても手術ではなく、保存していた造血幹細胞を通常の点滴と同じように血管に流し込むだけです。
すると、やがて骨髄に造血幹細胞がしっかり根付き、正常な形質細胞をつくり始めます。
移植は感染症のリスクを考え、無菌室でおこなわれます。
日本赤十字社医療センター 骨髄腫・アミロイドーシスセンター長 鈴木憲史さんは、『多発』について、血液を介してポツポツと他に転移するため『多発』と呼ばれていると説明されていました。
ちなみに、『自家』というのは、自分自身のものを移植するために、こう呼ばれています。
自家末梢血幹細胞移植の流れ
自家抹消血幹細胞移植は、ある程度長期間を要するようです。
治療の流れは以下のとおりです。
- 抗がん剤治療(がん細胞を減らす)【約4ヶ月】
- 造血幹細胞採取(薬で骨髄から血液に造血幹細胞を出す)【約7日間】
- 大量抗がん剤治療(骨髄の中を空にする)【約2日間】
- 移植から生着(点滴で造血幹細胞を体内に戻す)【約2週間】
※③④は無菌室にて実施されます
なお、移植治療中の副作用は『だるさ』『口内炎』『脱毛』などがあるということです。
自家末梢血幹細胞移植を受けることができる人
自家末梢血幹細胞移植をするには、以下の条件があります。
- 70歳以下
- 体力があって治療に耐えられる
- 患者本人が移植を希望
自家末梢血幹細胞移植にかかる費用
3割負担の場合、約100万円です。
高額療養費制度も適用すれば、さらに負担額を減らすこともできます。
CAR-T療法
CAR-T療法は、現在臨床治験中の治療法です。
患者の免疫細胞を取り出して遺伝子操作をします。
これを体内に戻してがん細胞を攻撃させるというものです。
がん細胞と戦うように教育してから戻すという画期的な治療法だといいます。
CAR-T療法は、かなりの効果が期待されているようですね。
ただし、現在のところ1回の点滴で2~3,000万程度かかると予想されています。
多発性骨髄腫のセルフチェック方法
『腰痛』+『貧血』『尿たんぱく』『腎臓機能の低下』
腰痛があり、さらに以下の項目に当てはまる場合は、多発性骨髄腫を疑いましょう。
- 貧血
- 尿たんぱく
- 腎臓機能の低下
なお、通常の腰痛とのちがいは、「人生でこんなにツラい思いをしたことない」という方がいるくらい痛いようです。
また、歯の治療(ズキンズキンする感じ)をイメージされる方が多いようです。
ちなみに、10万人に7人くらいが発病する病気だということです。
事前の生活でなにか悪いところがあるという変化は見られないようです。
健康診断でも発見できる
健康診断の結果を受けとったら、以下の項目を確認してみましょう。
- 総蛋白
- アルブミン
総蛋白の数値からアルブミンの数値を引いて4以上の場合、Mたんぱくが増えている可能性があり、多発性骨髄腫の疑いがあります。
多発性骨髄腫になりやすい人
40歳未満の患者数は圧倒的に少なく、年齢を重ねるにつれ、多くなります。
番組内のグラフでは特に55歳からは顕著に多くなっていました。
番組に登場した方々の闘病エピソード
13年前に多発性骨髄腫と診断された男性
本記事の冒頭でご紹介したこの男性、13年前に腰や背骨の痛みがありました。
当時は針の治療やマッサージに行ったりしたけれど、疲れで痛みが出たのかなくらいで深くは考えなかったようです。
しかし、半年たっても症状が一向に改善しないため、ペインクリニックへ。
血液検査をすすめられて受けたところ、異常な数値があるためと専門医の受診をすすめられました。
すぐに大学病院の血液内科で精密検査を受けました。
すると、多発性骨髄腫でした。
がっかりしたというよりも、病気を治さなければと前向きな姿勢だったそうです。
ただ、そんな矢先、骨髄腫による肺炎を発症してしまいます。
かなり重篤化してICU(集中治療室)にも入れられたそうです。
そんななか、彼を救ってくれたのは既に同じ血液の病気を克服した友人の言葉だったといいます。
「この病気は気力だぞ」
「気力で負けてはダメだよ」
などと助言を受けたそうです。
この病気は、メンタルが大きく関わってくるんだなと思いました。
しかし、素敵な友人ですよね。
医師からは『自家末梢血幹細胞移植』を提案されましたが、彼は『抗がん剤治療』を選びました。
自家末梢血幹細胞移植を受けたことのある人のブログなどを読むと、あまりに苦しそうだったため、「できれば抗がん剤治療で」とお願いしたんです。
定年前の患者さんには、できるだけ仕事を優先して定年退職してから移植をする人も多いようです。
男性も、通院治療を続けながら65歳の定年まで無事に勤務することができたということです。
最近は新薬も続々と開発されているため、男性は新薬も積極的に試していきました。
今も月1回の通院治療は続いていますが、充実した毎日を過ごせているようです。
ちなみに、新薬はここ10年で9種類ほどできてきたそうです。
73歳男性
趣味は旅行で海外にも10か国以上訪れているというこの男性。
健康には人一倍気を使っており、健康診断は欠かさず受診していました。
そんな男性に異変が起こったのは6年前。
腰に異常な痛みを感じたといいます。
- 今までに感じたことのない腰の痛み
- 本当に不愉快な形容のしようがないような痛み
男性は、「なんだこれは」と思いましたが、1日ですぐに治ったそうです。
ところが、その後も以下のようにカラダの異変が続きました。
- 原因不明のせきが止まらなくなる
- 階段をのぼるたび、激しい動悸や息切れがおこる
男性は「68歳だからもう歳かな」と思い、そのまま生活していました。
しかし、その8月には風邪をひいたことがない男性が、風邪をひいたといいます。
熱が出たけれど、以上があれば同月に実施される健康診断でわかると放置。
実際、健康診断では『血液に異常』が発見されます。
医師から血液の状態がよくないので血液内科を受診するように言われました。
すぐに総合病院の血液内科を受診すると、多発性骨髄腫と診断されたわけです。
このとき医師からはこのように言われたといいます。
- なかなか治療は難しい病気
- このまま放置したら平均3年で亡くなる
当時男性はすごく落ち込んで驚いたといいます。
この男性の腰の痛みは、前述の破骨細胞が骨を溶かした結果うまれた痛みだったんです。
男性の場合、前述の『自家末梢血幹細胞移植』での治療を選びました。
このとき男性は抗がん剤の副作用に苦しめられたといいます。
- しんどい
- 体が重くなって非常に動きにくい
- 顔を洗う時に数メートル動くのも体が重くて動きづらかった
そんな副作用に耐えた結果、移植に成功。
50日後には退院することができました。
その後2年近く、血液中にがん細胞は見つかってはいないようです。
ただ、経過をしっかりみていくことが重要となるようです。
特殊なケース
孤立性形質細胞腫
特殊な『孤立性形質細胞腫』というものがあり、これに罹患した男性がいました。
孤立性形質細胞腫は、骨髄腫細胞が全身に散らばらずに一か所にとどまっているというものです。
治療方法は、『抗ガン剤治療』に『放射線治療』をプラスすることで対応するようです。
一か所にとどまっているため、放射線を照射して『がん細胞をたたく』ことが有効なんですね。
放射線は2~3方向から合計30秒ほど照射します。
痛みなどもまったくないようです。
また、1ヶ月の入院で20回ほどの放射線療法をおこなった結果、痛みが消えたそうです。
放射線治療(25回照射)の費用
3割負担の場合、約8~12万円です。
ただ、孤立性形質細胞腫であっても、数年後に転移することがあるようです。
この男性の場合は、1度転移しましたが再び放射線を照射して、以後6年間再発していないそうです。
なお、放射線治療の目的は『痛みをとる』『がん細胞をなくす』です。
放射線の副作用としては、『けん怠感』や『放射性皮膚炎』などがあります。
ある程度の苦痛は伴いますが、効果的なようです。
あとがき
今回教えてくださった日本赤十字社医療センター 骨髄腫・アミロイドーシスセンター長 鈴木憲史さんは、腎臓が悪い方でなければ、基本的には『患者さんが働きながら治療をしていくこと』をコンセプトにしているそうです。
コルセットをつけることで、ふつうに働くことができる方も多いようです。
「治療は長期戦なので、力むことなく淡々とおこなっていくことが重要」と鈴木さん。
昔は平均3年の命といわれていましたが、今では7年以上と長くなってきています。
また、新薬の開発が進むと完治の可能性も出てくるかもしれません。
『どんな病気になったとしても、「希望」と「前向きな気持ち」を持つことが重要』なんだということを、番組に登場した方々から学ぶことができました。
以上、「多発性骨髄腫の治療方法や治療費は?新薬にも期待できそう。」でした。
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